投稿者 undecuplet | 2010/02/07

リー・リトナー(LEE RITENOUR)のクラシック・アルバム:アンパロ(AMPARO)

このアルバム・・何の情報もなく聴いたら、きっとリー・リトナー(LEE RITENOUR)さんのアルバムとは思わないでしょう。そのくらい、クラシカルな弦楽の心地よさが心にしみてきます。リトナー作品かどうか迷うだけでなく、僕自身がCDショップの店主だったら、きっとこのアルバムを何のジャンルに登録したらよいのかさえ迷うかもしれません。クラシック? ジャズ? フュージョン? かつてクロスオーバーということばありましたが、それとも異なります。いわばアコースティックなジャズ室内楽とでもいうべきもの・・新しい音楽の楽しみの発見をここに感じるのです。

本アルバムは、ジャズ・映画音楽界のピアニストでもあり作曲家、アレンジャー、プロデューサーでもあるデイヴ・グルーシン(DAVE GRUSHIN)と、ギターリスト、リー・リトナー (LEE RITENOUR)が組んだ2作目の作品です。(1作目は、2000年の『トゥー・ワールド』、人によってこのコンビの作品に『ハーレ・クィーン』を含める人もいるかもしれませんがそうすると3作目ですね)。ジャズ、ポップスとクラシックからゲストをフィーチャーして、ラテンやクラシックの名曲が楽しめます。アントニオ・カルロス・ジョビ ン、ラヴェル、フォーレなどの作品も収録され、グルーシンとリトナーが素晴らしいアレンジを聴かせてくれます。

こちらで一部試聴できます。

01) タンゴ・エン・パルケ・セントラル WRITTEN BY : DAVE GRUSIN
02) ダンソン・デ・エティケタ WRITTEN BY : DAVE GRUSIN
03) ホロポ・ペリグロソ WRITTEN BY : DAVE GRUSIN Transcription & Arrangement Dave Grusin
04) パヴァーヌ WRITTEN BY : GABRIEL FAURE Duet featuring Rene Fleming and Joshua Bell Transcription & Arrangement Dave Grusin
05) イングリッシュ・フォーク・ソング・スィート (IIマイ・ボニー・ボーイ) WRITTEN BY : RALPH VAUGHAN WILLIAMS Transcription & Arrangement Dave Grusin
06) シンス・ファースト・アイ・ソー・ユア・フェイス WRITTEN BY : ANONYMOUS Featuring James Taylor Transcription & Arrangement Dave Grusin
07) オーリャ・マリア(アンパロ) WRITTEN BY : ANTONIO CARLOS JOBIM Featuring Joshua Bell Arranged by Dave Grusin
08) マ・メール・ロワIV.~眠りの森の美女のパヴァーヌ WRITTEN BY : MAURICE RAVEL Transcription & Arrangement by Dave Grusin
09) エコー WRITTEN BY : LEE RITENOUR Arranged by Lee Ritenour & Dave Grusin
10) アルビノーニのアダージョ WRITTEN BY : TOMASO ALBINONI Featuring Chris Botti
11) 二重唱:貴方の顔には数多の優雅さが戯れています(歌劇リナルドより) WRITTEN BY : GEORGE FREDERIC HANDEL Arranged by Dave Grusin
12) シシリエンヌ WRITTEN BY : GABRIEL FAURE Arranged by Dave Grusin

1曲目、タンゴ・エン・パルケ・セントラル。グルーシンさんオリジナルのタンゴ。以前紹介したガリアーノさんのアコーディオンによるオリジナルのタンゴも本当にとてもチャーミングですが、このグルーシンさんのタンゴも素敵です。どちらも、自分の領域に無理矢理ひきこむのでなく、むしろタンゴというジャンルに新しい名曲をもちこんだ形。この曲をアルバムトップにもってきたリトナーさんたちのたくらみがわかる気がします。

4曲目、フォーレのパヴァーヌ。女声とのコラボがこの曲の風情を巧みに描きだします。

7曲目、オーリャ・マリア(アンパロ)。アントニオ・カルロス・ジョビンの傑作。彼のアルバム「ストーン・フラワー」に入っていたのを思い出します。リトナーのギターと弦楽室内楽とピアノの醸し出す情緒感がなんともいえずによいのです。

8曲目、ラヴェルのマ・メール・ロワ。ピアノではじまり、ラヴェルの匂いそのままに、リトナーのギターのメロディラインが重ねられます。ラヴェルのアンニュイな感覚が見事に醸し出されます。展開部との対比が美しく、いわばグルーブ感に満ちた1曲にしたてあげられています。

10曲目、アルビノーニのアダージョ。ザンフィルのパンフルートによる作品が有名ですが、弦楽と管によるやさしい風合いがこころをうちます。リピートのアレンジが哀しくせつなく迫ります。

一昨年、このアルバムの発売にあわせるように、すみだトリフォニーホールにて、リー・リトナー&デイブ・グルーシンとNJP(新日本フィル)との一夜限りのコンサートが開催されました。お客様の半分は新日フィルファン、半分はリトナーファンという、ふしぎな空気の漂うコンサートでした。僕のように、両方に興味があって・・というお客さまは残念ながら少数派だったかもしれません。

そのときにも感じたのですが、音楽にジャンルの区別をし、ラベルを貼るのは、本当にナンセンスなのだろうと思います。先日紹介したデオダートさんの作品もそうですし、多くのジャズやフュージョンのアーティストがクラシックの試みをしています。もちろん千差万別ですが、クラシックの何かを侵しているかというとそんなことは必ずしもなくて、音楽の可能性を広げているケースは、多いだろうと思います。

ですから問われるべきは、むしろ作品ごとの完成度の問題であるべきで、かつてのエマーソン・レイク・パーマ-から、現在の平原綾香まで、アーティストその人自身のオリジナリティが醸し出す空気感、カタルシスにまで昇華されていれば、まったく素敵なピュアーミュージックなのだろうと思うのです。

この意味でも、この月末にひらかれる清水靖晃さんのバッハ・ゴールドベルグはある種別格です。清水さんが、清水さん自身の音楽領域に無理矢理ひきよせるというものでなく、むしろゴールドベルグそのものの探求に、今回の試みを収斂させているからです。単なる清水靖晃ファンだけでなく、クラシックファンにこそ楽しめるコンサートになるだろうと想像させるサウンドが既にそこにあるからです。

音楽の純粋な愛好家として、ミュージックラバーのひとりとして、2月27日のコンサートはすみだトリフォニーに行こうと思っています。すみだトリフォニーホールがリー・リトナー&NJPにひきつづき、この公演を主催するというプロデュースに敬意を感じるとともに、その新しい試みに聴衆として参加できることに悦びを感じているからです。

amparo

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