投稿者 undecuplet | 2010/03/03

電子書籍をめぐるさまざまな試み~キンドル(kindle)、i-Pad、そして、ボイジャーの”BookServer”プロジェクトへの正式メンバー参加~

voyagerキンドル(kindle)ができて、キンドル・ストアが利用できるようになり、ずいぶんと電子書籍が身近になりました。思い出してみれば20年くらい前、ボイジャー(Voyager)がアップル(Apple)のハイパー・カード(Hyper Card)をベースにエキスパンド・ブック(Expanded Book)をだしたとき、「これがあれば便利だろうけれど」と思いつつ、「わざわざ電子書籍で本を読まなければならないのか・・」とも思ったのも事実でした。

そして、時代は過ぎ、インターネットが普及し、デバイスも大きくかわりました。そのときと今と何が違うのか・・。
ひとつは、もちろん高速回線でしょう。それも、携帯端末なのに、3Gのように高速なのは、当時を思えばただただ夢のようなお話です。
そして、携帯性。もちろん、携帯電話端末の小型化も目をみはるものがありますが、電子書籍ビューワーが・・例えばキンドルのような本のような大きさのものが、本と似たような重さと薄さ(!)・・特に、僕はこの薄さが大切なのだと思いますが・・・で手に入れられるようになった事実が、より本との互換性を感覚的に身近にしているのでしょう。
そして、もうひとつは、e-ink。液晶のように光り輝くものは、便利ではあるけれど、やはり書籍らしくなくさせてしまうのです。このあたり、僕は、圧倒的にe-ink支持派なのですが、液晶のi-Padがでてきた段階で、またさらに議論がいろいろと活発に起こることでしょう。

一方、電子書籍普及の副産物として、ここのところ書籍のフリーミアムがはやっているようです。文春新書「生命保険のカラクリ」も4月15日までPDFでフリーでダウンロードできるとのこと・・早速試してみました。ダウンロードして、解凍。そしてキンドルにいれてみたところ、これが何と、実に読みやすいのです。日本でキンドルはそれほど普及していないので、このプランを企画した方はキンドルで読むことはあまり想定していないのかもしれませんが、本物の紙の新書と変わらぬ読みやすさ。キンドル・ユーザーからすると、これをダウンロードした人が、本当に紙の書籍を改めて買うのだろうか・・とちょっと心配になってしまうほどです(でも、こうして、この話題がいろいろなところでとりあげられるでしょうから、それだけで、新書としては、異例の費用対効果抜群の無料パブにはなっていますね・・)

ところで、このようにキンドルはとても便利なのですが、そこに、さらにまもなくアップルがiPadをひきさげて、i-book  storeでこの分野に参入してきます。この2社はいわば、電子書籍ショップという意味で競合関係にあるのですが、ここにもうひとつ、まったく別の視点から電子書籍の考え方の普及をめざすグループがあります。それは、ボイジャーが先日、参加を発表した、BookServer です。

このBookServer、インターネット・アーカイブの設立者、ブルースター・ケール氏がすすめているもので、彼らの言い方をそのまま用いると「BookServerは、ツールや事業のフレームワークである。小売業者、図書館員、アグリゲータによる電子書籍の発見、販売、配信を可能にするオープン アーキテクチャのツール一式で、すべて読者が望むデバイス上でとても容易かつ満足できる読書体験を生み出すためのものである」とのこと。

そもそも、インターネット・アーカイブは1996年の設立以来、180万冊を超える電子化された書籍のファイルをはじめ、音楽・音声記録、映像、ソフトウェア、さらに1,500億ものWebページを収集してきました。これに加えて「全ての人々が利用できる、 電子出版の貸出と販売を可能とする規格(アーキテクチャー)」づくりが今回のBookServerにあたります。

昨秋、発表されたこのプランについて、米ボイジャーのボブ・スタイン氏(Bob Stein)が書かれたものがあるので、ちょっと長いですが、引用してみましょう。

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インターネット・アー カイブがとてもエキサイティングで、ことによると根本的な変化を生むかもしれないBookServer構想を発表した。インターネット・アーカイブのブルースター・ケールとピーター・ブラント リー、おめでとう。これはグーグル、アマゾン、そしてアップルの真の競争相手になる可能性がある。

以下は、この発表イベントのフラン・トゥーランによる詳細な解説の再投稿である。

すべてが変わった日 フラン・トゥーラン (Fran Toolan)
これではいささか退屈に聞こえるかもしれないが、発表され、デモがなされたものを順を追って辿らせてもらいたい(名前や順番が間違っていてもどうか お許しいただきたい。全部記憶を辿ってやっているので):

* ブルースターは、世界中の図書館でスキャンされた本の数が過去一年で100万冊から160万冊に増加したことを発表した。

* それから彼は、iPhone、Sony Reader、そして他の読書装置でもフォントが変更可能ならテキストをリフローするやり方でStanza経由でアクセスさせることで、その160万冊が すべてePubフォーマットで利用できることを発表した。

* 次に彼が発表したのは、これらのファイルがePubフォーマットだけでなく、「Daisy」フォーマットでも利用できることである。Daisyとは、作品 の点字やテキスト音声変換のソフトウェアによる通訳を作成するのに使用されるフォーマットだ。

* 彼が他の媒体に関して引用した上記以外の統計情報として、テレビ録画10万時間、40万もの音楽録音、そして150億(そう、「150万」でなく「150 億」だ)ものウェブページがアーカイブされているというのがあった。

* それから彼は一連のデモを演出した。インターネット・アーカイブのラジ・クマーは、BookServerの技術で本をOLPC(One Laptop per Child)XOラップトップに無線で伝送するデモを行なった。100万台のOLPCマシンが世界中の恵まれない子供たちの手に渡っており、今日彼らは 160万冊の本に新たにアクセスできるようになったのだ。

* 続いてインターネット・アーカイブのマイケル・アンが、インターネット・アーカイブでMOBIフォーマットで入手できる本がキンドルに――キンドル・スト アの外から――ダウンロードしてキンドル上で読めることのデモを行なった。インターネット・アーカイブの本の多くはMOBIフォーマットでも用意されてい るので、キンドル読者はどこからでもインターネット・アーカイブの広大なデータベースにもアクセスできるわけだ。

* さて次は、インターネット・アーカイブのマイク・マッケイブが登場し、DaisyフォーマットのファイルがPCにダウンロードされ、それから本を読むのが 不自由な人のために特別に設計されたHumana製のデバイスにダウンロードできるデモを行なった。そのデバイスはテキスト音声変換技術を利用してコンテ ンツを伝送するが、このデバイスの最も驚くべきところは、視覚障害者が、ある章から別の章に移ったり、特定のページに飛んだりと本をナビゲートできるくら いかつてなく使いやすいことだ。

* ブルースターはデモを一休みしていくつかの事実を詳しく述べた。その中で最も重要だったのは、世界中の図書館にある本が三つのカテゴリに分類されるという 事実である。一番目のカテゴリはパブリックドメインで、これが世の中の本の20%を占めている――これがインターネット・アーカイブでスキャンされつつあ る本だ。二番目のカテゴリは活字となり今でも商業的に成立している本で、これが世界の図書館の本の10%を占める。最後のカテゴリが「絶版」だが今でも著 作権が残っている本である。これが本の70%を占めており、ブリュースターはこの膨大な量の情報を出版の「死角」と呼んだ。これらの多くが、グーグルブッ ク検索の和解に関連してよく耳にした孤児作品――著作権保持者に連絡を取る方法が誰も分からない――である(出版業界にいる僕の友人は全員、こうした統計 をしばらく考えたら、頭がクラクラし出すだろう)。

* 繁栄するデジタルエコシステムは、情報が自由に手に入るだけでなく、消費者が本を買ったり、借りたりできなくてはならないということについてブルースター は話を続けた。

* ここでマイケルが戻って来て、iPhoneのStanzaリーダ上で――BookServerの技術を使って――オライリーから出ている本を買うデモを行 なった。Stanzaからでなく、オライリーから直接購入したのだ。本の読者であれば、それに驚くことなど何もないと思うかもしれないが、出版業者にとっ てはこれはすごく驚くべきものなのだ。StanzaはBookServerの技術をサポートしながら、伝送プラットフォームとしてその技術を使って出版社 や他の小売店から直接商品を買うこともサポートしている(繰り返すが、出版業界にいる友人はこのことを少し考えてもらいたい)。

* 最後のデモは僕には目新しいものではなかったが、ラジが壇上に戻り、彼とブルースターが、Adobe ACS4サーバ技術を使って電子書籍の貸し出し、そしてどこにある図書館からでも二重貸し出しからの保護が可能であることのデモを行なった。はじめブルー スターが貸し出しプロセスを実演し、それからラジが同じ本を借りようとしたが、その本は既にチェックアウトしているので借りることができないと分かるわけ だ。ソニーへの賛辞があり、それからブルースターは、自分が借りたテキストをSony Readerにダウンロードした。このモデルは、(多くの出版社が、図書館から電子書籍のコピーを無限に「貸し出し」するのが容易すぎることを恐れている のに反して)図書館が出版社から書籍を購入し、可能な冊数だけ貸し出しを行なう慣習を保護している。

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ボブ・スタイン(Bob Stein)さんやフラン・トゥーラン (Fran Toolan)さんの興奮が伝わってくるようです。
キンドルやi-Ppadが電子書籍をマーケットとしてとらえているとすると、彼らは、書籍文化全体を視野にいれていることがわかります。ですので、同じ土俵でとらえるのはちょっと違うかもしれませんが、より包括的に、現実的に、それこそ電子書籍をめぐるステークホルダーが「電子書物」を中心に生き延びていけるようにと考えられているところが、なんとも、素晴らしいところ。電子書籍そのものに未だ及び腰に近いこの国の状況を思うと何かうらやましい気持ちにさえなります。

そして、このプロジェクトに、日本のボイジャーが正式メンバーとして参加するというアナウンスがつい先日行われました。

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インターネット・アーカイブは1996年の設立以来、180万冊を超える電子化された書籍のファイルをはじめ、音楽・音声記録、映像、ソフトウェ ア、さらに1,500億ものWebページ(Wayback Machineとして有名)を収集してきましたが、それらに加えて「全ての人々が利用できる、 電子出版の貸出と販売を可能とする規格(アーキテクチャー)」づくりを推進しています。昨年10月に発表されたこの構想の名前が”BookServer”です。
すでにこのプロジェクトには、アドビやオライリーのほか、米国最大の取次会社(ホールセラー)のイングラム、トロント大学、アマゾンのライバルとも目されるカナダのKoBoなどが参加しており、ボイジャー は日本からの初の参加メンバーになります。
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日本の現在のやや閉塞的状況をみるに、また日本語という特殊なマーケットゆえに、さらに紆余曲折がいろいろあるかもしれません。でも、この分野、やはり「大切なところには、常にボイジャーあり」なのですね。失われずにつづくボイジャーの志しにうれしく、何か勇気がわいてくると同時に、私たち自身の書籍に対する愛情・思いそのものが試されているのだろうという気持ちにもなったのでした。

※キンドルストアの電子書籍流通と図書館について投稿しました http://wp.me/pMonj-bt

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