投稿者 undecuplet | 2010/03/31

キンドル(kindle)、iPadのせまりくる電子書籍出版の流れに対してどのような対応をしていくのだろうか~「日本電子書籍出版社協会」の発足

kindlekindle3月も終わりをつげようというこの時期にいたって、電子出版をめぐって、いろいろ話題があるこの数日でした。そのいくつかについて今日はちょっと追ってみることにします。
ひとつは、3月24日、出版31社が参加し、「日本電子書籍出版社協会」が発足したこと。

INTERNET WATCH の報道によれば、

設立総会と理事会の終了後に行われた記者会見で野間氏は、「電子書籍市場が日本の出版界にもたらす大きな影響は、決して無視できるものではないが、いたずらに悲観すべき材料でもない」として、協会では「著作者の利益・権利を確保すること」「読者の利便性に資すること」「紙とデジタルの連動・共存」の3つの理念を柱として、参加各社に出版のデジタル化・電子書籍市場に積極的な取り組みをしてもらいたいと語った。

(中略)

電子書籍市場によって著作者と読者がダイレクトにつながり、出版社が中抜きされる構造になることへの不安はないかという質問に対して野間氏は、 「出版社の役割や価値を、著作者にどう評価してもらえるか次第。価値を認めてもらえれば中抜きされることはないと思うが、そうでなければ中抜きされるだろう」と説明。日本での電子書籍市場の拡大については、「いまのところ展望はまだ見えていないが、我々としては紙と電子の相乗効果を狙っている、紙も電子も 膨らみ、パイが大きくなっていくことを目標としたい」と語った。

出版社が新たな権利として「版面権」のようなものを確保していくことを目指すのかという問いには、「紙の時代から議論となってきたが、権利をなんとかして確保していこうという後ろ向きなことではなく、これからの事業を前向きに進めていくために、著作者の理解を得ながら検討していきたい」と 答えた。

この協会の設立によって、日本において電子出版がより加速されるのかどうか、どうも意見の分かれるところです。しかし、キンドル(kindle)、IPadと待ったなしの状況はいっそう、この国の電子出版について逼迫感を強めている感覚があります。市場全体の拡大こそがまずは近道なのでしょうが、そのための具体策がどのようにすすむのか、また、協会という手法がよいのかについては、今後さらに議論をよびそうな雲行きです。

そんな折、この話題にあわせてか、タイムリーなインタビューが「誠biz.ID」に掲載されました。「Kindle初の日本語マンガはいかにして誕生したか――電子書籍出版秘話

キンドル・ストアで、はじめて日本語マンガを出版するに至った経緯をインタビュー構成で掲載しています。山口真弘さんが、みんながききたいであろうことを、巧みにおもしろくインタビューしています。一部引用してみましょう。

著者はコミックバーズの「大東京トイボックス」などで知られるうめ氏。今回は、2人の漫画ユニット「うめ」として活動し、原作/演出を担当す る小沢高広氏に、Kindle DTPでの電子書籍出版のきっか けや経緯、さらには現在のマンガ業界が抱える問題点、今後のマンガ家と出版社の関係などについて聞いた。

誠 Biz.ID マンガ原稿のデジタル化への 取り組みは早かった方なんでしょうか。

小沢氏 僕はデビューがモーニングだったんですが、モーニングでは(デジタル化は)いちばんでした。担当編集が あまりそちらの知識がなくて、製版所のデジタル入稿の担当者と直接話してくれということで製版所に行ったら、製版所に来たマンガ家は初めてだということで 上を下への大騒ぎになって。すごくえらい人たちがいっぱい名刺をくれ ました(笑)

誠 Biz.ID なるほど。それはいつごろの話ですか。

小沢氏 トイボ(注:大東京トイボックスの前身に当たる「東京トイボックス」)を始めた時なので、2005年で すね。なのでわりと最近です。ただ、モーニングは正直デジタル化は遅かったです。それまでもカラーCGをデータ入稿という方はいたんですが、モノクロ原稿 で出した方はいなくて。データを紙に出して入稿という方は結構いらっしゃったんですけど。ただポストスクリプト対応のプリンタだと何十万に もなっちゃって初期投資が 高くなるので、じゃあデータでいいじゃんと。逆にもっと部数が少ない月刊誌の方がデジタル化は進んでましたね。作家さんも若かったりするんで。

で、実際の作業についてとなると、とても具体的にこたえられています・・

■承認が下りるまで48時間もかかっていない

誠 Biz.ID 今回電子書籍化した青空ファインダーロック(AOZORA Finder Rock)は、以前「日経エンタテインメント!」に単発で掲載された作品とのことですが、これを選んだきっかけは。

小沢氏 もちろん描き下ろすと言う手もあったんですが、権利関係が自由なものを出すというのが何より大事だな と。過去によそで描いた短編はあったんですが、そちらからはもう少し描き足して単行本にしたいねというオファーをいただいていたので、そうそう勝手に動か せない。日経BPさんの方でまとめて単行本を出そうという気はまったくない状態だったので、ちょっと相談させてもらって。あと読者の人から見たいという声 があったのも合わせて、じゃあちょうどいいし、やってみようかという形ですね。

誠 Biz.ID 編集部の対応はいかがでしたか。理解を示したんでしょうか。

小沢氏 もうぜひぜひ、ぜんぜんOKという姿勢です。

誠 Biz.ID 例えば誌名を入れてくれといった要望は。

小沢氏 特になかったですね。ただ、そのへんは抜かったなと思って、最新の第三版では最後に著作権の表記とか、 初出とかをぜんぶ入れるようにしました。当時の編集さんの名前も許可を取って入れてます。

(中略)

誠 Biz.ID 実際のKindle DTPへの登録作業はぜんぶ小沢さんがやったんでしょうか。

小沢氏 そうです。基本的に自分でやっています。ただ、友達のエンジニアの人にうちに来てもらって、横に座って もらって「どうしようか」「ああしようか」といろいろ相談しながらやるという形です。

誠 Biz.ID Kindle DTPは現時点では英語のインタフェースですが、そのあたりのハンデはどうでしたか。

小沢氏 エンジニアの友達が翻訳などをしていて英語は普通にできるので、出版関係であればまあまあ分かるね、と いう感じで。ただ、作者だったらAuthorとか、そんなに難しい単語を使っているわけではないです。強いて言えば、本の紹介のところの英文が、難しくす ればいくらでも難しくできるというくらいですかね。

誠 Biz.ID Kindle DTPには検索用のキーワードを登録する項目があったと思うんですが、どうされましたか。

小沢氏 いや、適当に「japanese manga」とか「comic」とか「photographer」とか「idol」とか、そんな感じで入れました。

誠 Biz.ID 実作業期間はどのくらいでしたか。

小沢氏 入稿作業自体は、僕が Amazon.comのアカウントを持っていなかったので、それの取得を含めて2時間くらいですね。そこから承認が下りるまでは48~72時間となってい るんですが、48時間もかかっていない気がしますね。36時間はかかっていると思うんですけど。

誠 Biz.ID  ブログで入稿体験記 のエントリを書かれている最中に、すんなり承認されてしまったんですね。

小沢氏 そうです (笑)。最中に通ってしまいました。

誠 Biz.ID 申請して一発で通ったということは、いま仮に同 じようにデジタル化された原稿が手元にあれば、2時間あれば登録してパブリッシュして、48時間あれば販売開始まで持っていけるということですよね。

小 沢氏 そういうことになりますね。

あまりの簡便さに、なにか拍子抜けしてしまいます。こうなると、自ら出版を試みたくなる人、出版をこころざしたい人は、きっと増えてくるに違いないと想像されます。さて、現実に書き手としての気持ちについてもインタビューされています・・

誠 Biz.ID 電子書籍での出版を前提にするのであれば原稿の作り方、描き方も変わってくるということです ね。

小沢氏 若干は変わってくると思います。激しくマルチメディアに行きたい人と、いまの延長線上で キャラクターをノドの部分の真ん中に持ってきて大丈夫という程度の変化だったりと、二通りあると思うんですけど。

もちろん媒体の特性に合 わせることは大事なんですが、マンガを作るといういちばんのメリットは、すごく少ない金額で派手なお話が作れることなんですよ。いまゲーム業界マンガ(注:大東京トイボックス)を描いてるんですが、仮にそんな現実の世界を舞台にしているものでも、ド ラマ化しようとしたら億単位以上のお金を動かさなくちゃい けない。ましてやそれがファンタジーやSFだと、ケタ違いのお金 がかかる。雑誌一冊分の特撮を 作るのにいくらかかるんだと想像したら恐ろしいですよね。

だけどマンガだったらぜんぜんかからないですよね。原材料費だけなら数十円。原 稿料も1万円、2万円といった単位で、相当の大御所さんでも5万円程度でできるという小回り感がマンガは一番のメリットだと思うので、実はマルチメディア 化というのはそのメリットを消してしまうんです。なので、そういう人もいるだろうけど、すべてがそうなる気はしない、それはマンガ自体がダメになってしま うと思います。そちらの方がフルアニメを作るよりは楽だと思うので、好きな人はやるでしょうけどね。

マスメディアからマイクロメディアへの大きな波のようなものが、ひしひしと感じられます。ところで、キンドル(kindle)という媒体については・・

個人で出してる作家さんいますよね、って言えるだけでもだいぶ違う

誠 Biz.ID この記事の読者には、おそらくKindleによる電子出版に興味がある人は多いと思うのです が、小沢さんとしてはいかがでしょう。おすすめでしょうか。

小沢氏 そもそもKindleでの電子出版を始めたきっかけというのが、一応これは1月24日の夕方にやっていたんですが、実はやるって決めてから1週間くらいしか経ってないんですね。思い立ったのは。日本電子書籍出版社協会というのが記事になっていたんですね。大手出版社二十数社が集まって2月中にどうのこう のという記事もあって、その中で確か講談社の野間(省伸)副社長が、デジタル化で出版社が作品の二次利用ができる権利を著作者とともに整備していくということを言ってて、その一文がなんど読んでも理解できなかったんですね。Amazonが著作者に直接交渉して電子出版を図れば最初に本として刊行した出版社はなにもできない、とも言ってて。これに非常に頭に来まして。だってあんたら絶版にしてんじゃん、ていう。

誠 Biz.ID 絶版にして 塩漬けの状態にしているという。

小沢氏 そうですね、権利だけ持っていってて。一般的な出版契約書って いうのは、3年後か5年後くらいでどっちかが更新しないよと言えば契約関係を破棄できるんですね。なのでそこで破棄してしまえば、出版権を次どこに委ねる かというのは自由で、出版社を自分で見つけてアピールして売ったっていいわけですし、もちろん電子書籍化したいと いったっていいわけです。ここ5年か10年くらいの間に結んだ出版契約書というのは実は電子出版に関する契約はほとんど書いてあるんですよね。(印税率 は)たいていは15%ですね。それでも一般の書籍(の印税率10%)に比べたら高いんだからいいじゃんという話なんですが、これは実売ベースの数字なので、ぜんぜんお金の入り方が違うわけ です。

いろんなところの法務にも確認したんですが、Kindleの場合、オプションつけて70%もらう場合でも、著者にはやっぱり15% しか払えない、いまの契約のままだとそうなります、という話で。Kindleとかを想定していない段階で作っている契約書なんで、もちろんそこは今後改善 されていくとは思うんですが、Kindleで出すのはそんなに難しいの、出版社に絶対代わってもらわなくちゃいけないのっていう疑問があって。

選択肢としてもちろん出版社にそういうふうな法務の部分も含めてお願いしたいという人もいれば、それはそれでいいと思うんですね。でも、個人で出したいと いう人もいっぱいいると思うんですよ。で、そのために誰でもできることだよというのを明らかにしたかったというのが、今回の動機として実はいちばんあっ て。少なくとも誰かがやっちゃえば、でも個人で出してる作家さんいますよねって言えるわけで、それだけでも違うと思うんですよ。なのでどんどんそこは発信していって自由にしたいなという思いがありますね。そういう意味で新しい関係というか、そういうのを作れればいいじゃないかなというところです。

誠 Biz.ID 大同団結してない出版社の方が面白い気がしますね。

コンテンツにおける「塩漬け」の問題は、まさに寡占的流通が存在するところにおいては、必ずや起きている問題でしょう。このあたりの著作者と企業としてのマスメディ アの心理の対決というのが、この電子流通の誕生によって問題として先鋭化するのは理解しやすいところです。
そしてまた、ここでも件の日本電子書籍出版社協会について触れています。著者側の視点からみたとき、協会がそこにどううつるのか、そのあたり、実際に協会の側はどのようにとらえているのかが、気になるところです。

そして、もうひとつ、週刊ダイヤモンド誌のニュースが話題になりました。ここではもう深堀しませんが、「ダイヤモンド誌」の「電子出版」特集見送りの顛末・・・これだけ注目を集めてしまうと、ことの真相はさておき、やはり、あまりに日が近かっただけに日本電子書籍出版社協会の存在のありようが関係していたようにさえみえてくるのがふしぎなところです。

この協会に限らず、どのような業界団体も、団体を結成する以上、なんらかの目的があって一緒になるのでしょうから、何かを守る・・という方向にいくのは必然だとも思われます。そして、これほどいくつもの事象に関連して、その存在と行動が注目されるのをみるにつけ、この協会の存在自体がすでにパワーとなっていることの証左でもあり、その意味では協会の設立はすでにある種成功しているのかもしれません。

本来、協会の最終的成功は、やはり、彼らが第一義的に語るように、「市場の拡大」にあるのはまちがいないでしょう。しかし一方で、歴史的にみると強固を誇った業界ほど、その強固さゆえに、市場と異なった判断をしてしまった歴史的経緯も散見されます。テレビ、新聞、教育、医療・・・何かに守られて発展していった業界ほど、むしろその制度的守りが弱点になる・・少なくとも歴史的にはそうでした。だからこそ出版社の自律的行動がうまくいくか・・常にある種のいろめがねでみられてしまうのは仕方がないことなのかもしれません。

blog、twitterをはじめとして新しいメディアの普及が、人間の情報伝播手法が、マスからマイクロにむかわせていくとき、社会も中枢的システムから非中枢的システムへと大きくシフトするパラダイムシフトが起きている時代なのだろうという気がします。その意味で、わたしたちのニーズそのものの多様化には、マスの出版社ではない、それぞれの小さな人たちがくりだすマイクロの戦いが、ぽこぽことあちらこちらで起きることこそ、功を奏するような気もするのです。

しかし、それにしても、そのようなシフトの引き金をひいているのが、アマゾンであり、アップルであり、グーグルといった市場寡占状態を実現している民間企業であるところが、皮肉でもあり、考えさせられるところでもあります。

「需要」と「供給」の対決によって、その決着点が市場原理による価格であるというずっとつづいてきた2元論的メカニズムの方法論が、真の意味で解体されつつある結果なのかもしれない・・そんな気もしてきます。グーローバルに成功し、いきつづけている企業がもつべきある種のオープン型戦略の方法論とは、需要者と供給者のそれぞれの心理の協同の戦略の結果・・そのようなあらたな市場の方法論がそこに提示されているような気もするのです。市場に対して圧倒的影響力があるからこそ、むしろ、オープン戦略をとる。勝ち続けるためにこそ逆に必要なことなのだろうと彼らが考えているからかもしれません・・。
一方、ひるがえってみると日本からは、なぜこのような理念・手法ををもつ成功企業が登場しにくいのか・・そこにあるだろう「何らかの理由」について、今回の協会の存在が、さらに何かヒントを与えてくれる気もしてきたりします。このあたり、機会をみてさらに考えつづけてみようと思います。

※キンドルストアの電子書籍流通と図書館について投稿しました http://wp.me/pMonj-bt


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