投稿者 undecuplet | 2010/06/02

まもなく来日 ダン・タイ・ソンの比類なきラヴェル~亡き王女のためのパヴァーヌ[ PAVANE POUR UNE INFANTE DEFUNTE DANG THAI SON (1995)]

ダン・タイ・ソンのラヴェルは、究極のラヴェルでしょう。それは、繊細さとオリジナリティとともに共存させるという意味において、他に類をみないという意味でもあります。2008年10月に、来日し、紀尾井ホールで演奏したとき、そこで演奏されたラ・ヴァルスは、まさに極上の体験でした。

素晴らしく真にラヴェル的でありながら、かつてまったくきいたことのないラヴェル。あまりに完璧な技巧、繊細な構成、それでいてオリジナルな解釈であり、縦横無尽なスピードの展開は、体中が震え、発汗するのが自覚できるほどの興奮を与えてくれるものでした。そして、もちろんラヴェルのラ・ヴァルスであり、こころ踊る躍動感あふれるラ・ヴァルスなのです。

亡き王女のためのパヴァーヌ
ダン・タイ・ソン

1. 鏡 MIROIRS
2. 優雅にして感傷的なワルツ VALSES NOBLES ET SENTIMENTALES
3. ソナチネ SONATINE
4. 亡き王女のためのパヴァーヌ PAVANE POUR UNE IXFANTE DEFUNTE

アルバムの伊藤よし子さんによるライナー・ノーツが、僕が感じたこのあたりの空気と同じことをまさに伝えているので、ここに引用してみましょう。

ダン・タイ・ソンはずいぶん前からラヴェルを弾きたい、ラヴェルに魅せられているんだといいつづけてきた。ラヴェルの音楽のなかにあるイマジネーションとファンタジーに引きつけられるんだと。ラヴェルを弾き始めたころは、まずそのきらびやかで美しい音の色彩感に心が動かされたというが、弾きこんでいくうちにもっと深いもの、各々の作品のなかに隠れているこまやかな感情に引きつけられるようになったという。

「ラヴェルの場合、感情が前面にこれでもかというように押しつけがましくでてこない。まるで薄いヴェールに包まれているような感じを受けます。その奥に何かがあるような、ミステリアスな雰囲気をもっている。ですから、ラヴェルを弾いているといつも新しい発見があり、未知の美しい響きに遭遇できて、なんだかワクワクしてくるんです」

ダン・タイ・ソンのピアノの音色は美しい。それはショパンを弾いても、他の作曲家の作品を弾いても厳然として存在している彼の強烈な個性だ。この美音が、ラヴェルで一気に開花した。ここに聴くラヴェルは、透明なクリスタルのような純粋な美しさをもって聴き手の心に迫ってくる。きらきらと輝き、どの方向から見ても美しいのだが、その美しさはどこかひそやかで無垢な麗しさを秘めている。

素顔のダン・タイ・ソンはとてもこまやかな神経の持ち主だが、それが音楽にも現れ、このラヴェルは実に緻密である。全体の構成、各フレーズ、こまやかなリズム、打鍵にいたるまで、すみずみまで神経が行き届いている。

ダン・タイ・ソンはロシアの地から出て初めてパリを訪れたとき、ポリーニの演奏を聴いて言葉では表現できないほどの感銘を受けたという。そのときから彼は緻密な演奏を心がけ、音に主張をもつことをモットーとしてきた。それに加え、最近のダン・タイ・ソンの演奏は自信に満ちている。以前のやさしさに、ある種の強さがプラスされたようだ。さまざまな国に移り住み、決して平坦ではない人生を送ったことが、彼の音楽を骨太にしたのだろうか。

まさに、ダン・タイ・ソンが語る心情は、演奏を聴くと伝わってくるものそのものです。ところで、このアルバムは1995年のもの。それでも、彼のラヴェル愛は、演奏された音楽に深く刻まれています。この頃は、まだオーソドックスに端正な演奏ですが、特に、「道化師の朝の歌」や、「優雅にして感傷的なワルツ」などでは、ダン・タイ・ソンならではの優美さがひかります。

そのダン・タイ・ソン、まもなく、再び紀尾井ホールのステージにたちます。今回は、ショパンが予定されていますが、あの繊細な時空間を共有できるかと思うと、鳥肌がたつ思いです。楽しみが迫ってきました。

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