エストニアの俊英が織りなす素晴らしき追悼歌

 

指揮:パーヴォ・ヤルヴィ
ヴァイオリン:五嶋みどり
エストニア・フェスティバル管弦楽団

 
ペルト:ベンジャミン・ブリテンへの追悼歌
シベリウス:ヴァイオリン協奏曲 ニ短調 Op.47
トゥール:テンペストの呪文
シベリウス:交響曲第2番 ニ長調 Op.43

 
J.S.バッハ:無伴奏ヴァイオリン・ソナタ第3番 ハ長調 BWV1005 より 第3楽章 ラルゴ(ヴァイオリン・アンコール)
レポ・スメラ:スプリング・フライ
ヒューゴ・アルヴェーン:羊飼いの娘の踊り

 
この響きの巧みさ、うねるような弦楽のたたずまい・・どこかで
きいたことのあるようななつかしさ・・
そうだ、ルツェルン祝祭管弦楽団だと思いいたった

 

あるカラーに染まっていない、だけどものすごくうまい・・そして何か
この世のここだけのといった緊張感がある・・
きっとそういうことがこの「祝祭」オーケストラの運命なのだろう

 

それにしても素晴らしい演奏だった
五嶋みどりさんの圧倒する力もさることながら、
僕が今回特に感動したのは、
ブリテンへの追悼歌だ

 

鐘の音とともにはじまり、鐘の音とともにおわる
その余韻がおわるまでがその曲なのだが、
満杯の客席の誰もがその余韻を見事に堪能した

 
この日は祭日の昼間ということもあり、ふだんコンサートに
こなれなれていない人も多かったと思うけど
そういった人も含めて、ひとつの気持ちにまとめあげてしまう
音楽の力、

ヤルヴィとこの祝祭管弦楽団の魅力を思わずにはいられなかった

 

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ぜひまたききたいと思う

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いま、最高のラヴェルの弦楽四重奏曲をきくには、クァルテット・ヴァン・カイク以上のものを僕は知らない

 

 

あまりに素晴らしいカルテット・ヴァン・カイクだったので
2晩つづけて通った

 

 

1晩めは、武蔵野市民
前半ではプーランク:3つの歌曲のうち、「愛の小径」がとてもよかった
そして、後半、圧倒的なドビュッシー。
彼らの特徴は、特にうまい突出した人がいないこと
よく、有名なソリスト4人を集めてクアルテットを組んで
宣伝していたことがあったけれど、
あれはそれぞれの個性の面白さはあっても
クアルテットの本質的面白さとは遠いものだった

 

 

それに比べ、ヴァン・カイクはいい
とても若い4人がとても素直で柔軟なのだ
突出しないから下手なのではない
それぞれの持ち味とそれぞれの関連したハーモニーを
とても柔軟に対応する
音楽的なのだ
こんな素晴らしいドビュッシーの弦カルをきいたことはない

 

 

というわけで、翌日、急遽サルビアホールのチケットを
買って参上したわけ
(だけれど、武蔵野市民とサルビアでチケットの値段が
倍以上というのはどういうことなのだろう
客席数の違いはあるけれど、演奏会としてはどうなのだろうか
と思ってしまう)

 

 

二日目は、もちろんラヴェル。
これは、生できく楽しさを存分にあじあわせてくれた
CDなどの音源できくと、きれいに加工されて
まるでひとりで弾いているようなメロディが
実際は、いくにんかのリレーで奏でられていたりして
これはこれで目の前でみるにしくはなし

 

 

僕は、特に今回ヴィオラのフランソワの感じが気に入った
いい笑顔で楽しそうに、そして音楽を味わって演奏しているのが
伝わってくるのだ

 

 

ちなみに彼らは2012年結成。
2015年にはあのウィグモアホールで受賞。
BBCの新世代アーティストにも選ばれている
今回、初来日。
実現してくれた武蔵野市民に感謝するとともに
またまたファンになってしまった

 

 

とにかくまたすぐに来てほしい
いくらでもききたいカルテットはそういない
そして、強調するが、ラヴェルの弦楽四重奏曲は現在最高だと思う
ぜひ、CDもきいてみてほしい
音楽の神様 ありがとう

 

 
出演
ヴァン・カイック弦楽四重奏団
ニコラ・ヴァン・カイック(ヴァイオリン)
シルヴァン・ファーヴル=ビュル(ヴァイオリン)
エマニュエル・フランソワ(ヴィオラ)
フランソワ・ロバン(チェロ)

 

 
4月18日 武蔵野市民

モーツァルト:弦楽四重奏曲第15番 ニ短調 K. 421
プーランク:3つの歌曲
ドビュッシー:弦楽四重奏曲 ト短調 Op.10

 

 
4月19日 さるびあホール

モーツァルト:弦楽四重奏曲第15番 ニ短調 K. 421
ラヴェル:弦楽四重奏曲
ブラームス:弦楽四重奏曲2番

 

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いま、もっとも旬なラヴェル弾き・・ジャン=フレデリック・ヌーブルジェ

 

 
ジャン=フレデリック・ヌーブルジェ・・先日のスイスロマンドと同行して
ドビュッシーのピアノを披露をしたが、その繊細さと圧倒的巧みさは
聴衆を魅了した

 

 
彼だけをききにいってもよかったほどすばらしかった

 

 
彼のライブアルバムがでているが、特にラヴァラスは、近年きいた
もののなかでは群を抜いて最高だ

 

動画はショパンだが、これでも十分に彼のいまのすごさが伝わってくる
クラシックは本当に、次々と俊英が登場する
楽しみなジャンルだ

 

 

 

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あの色彩ゆたかなスイス・ロマンドは健在だった

 

僕の生まれて最初にかったレコードは、
アンセルメ・スイスロマンドのラヴェル管弦楽曲全集だった
お金をためて大枚をはたいたのでよく覚えているし
すりきえるほどきいた

 

だから、僕の中のラヴェルは、アンセルメが80%くらいかもしれない
最近のデュトワもそうだけれど、
フランス系のオケは、グルーブが深い
それが下品でないところがすばらしく
とてつもなく楽しい

 

今日のコンサートもそれを十分堪能できた

 

指揮:ジョナサン・ノット
ピアノ:ジャン=フレデリック・ヌーブルジェ
スイス・ロマンド管弦楽団

 

ドビュッシー:遊戯
ドビュッシー:ピアノと管弦楽のための幻想曲
ストラヴィンスキー:3楽章の交響曲
デュカス:交響詩『魔法使いの弟子』
ショパン:24の前奏曲 Op.28 第8番 嬰へ短調、第17番 変イ長調(ピアノ・アンコール)
リゲティ:ルーマニア協奏曲 より 第4楽章

 
前半のドビュッシーも楽しかった
ほりが深く、金管がとてつもなくうまい
後半のデュカスも、あの劇番のような曲が
(本来順番が逆に制作さえれたのだけれど)
まさに、いきいきとしていた

 
今日のお客様は得したのじゃないかな
S席にずいぶんと空席がめだったのが残念だった

 
でもとにく、ノット・スイスロマンドはこれからも
相当いいと思う。おすすめです

 

 

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投稿者 undecuplet | 2019/03/30

Isotek 噂に違わぬすごい電源だった

Isotek 噂に違わぬすごい電源だった

audioにおいて、電源関連ほど難しいものはない

 

 
半分オカルトみたいな、電源ケーブルの変更も
えっと思うほどに、音が変わる
これは経験者であればあるほど、実感することだろう
だけれども、その説明となると、これまた難しい
しかも、この差は、アンプの差とはまた違ったニュアンスだから
さらに難しい

 

 
isotekは英国のキース・マーティンという人が開発したもの
こういうまったく新しいタイプの製品は、
個人の名で語られることが多い
ノッチンガム・アナログ・スタジオも
コードも
タンノイのあの古典的シリーズも
個性のあるものは、みな開発者の個人名があわせて語られる

 

 
こうして書いてきて、ふと思ったのだが
僕の好みのオーディオ製品は、英国産が多いのかもしれない
(アンプのパス・オーディオは米国だけれど・・)
オーディオの世界は、ある意味で個人の力で切り開くことのできる
ギリギリのマーケット規模なのかもしれない
そう、合議制の正解ではなく、正解はいろいろな正解があるところが
オーディオの面白いところなのでしょうね。

 

 
で、このIsotekだが、
電源にしては、とても軽い
片手でもてるほどの製品
アキュフェーズやラックスマンの時代の電源は
重さが勝負というほど、ひとりでは運べないほどの重さを
競っていた

 

 
それに比べると、まったく異なった方式なので、
軽くてもOKなのだろうが、
使ってみた音質の差は相当なものがある
透明度の増し方とヴォー-カルやヴァイオリンなどのあたたかさが
まったくすごいのだ
すごいとしかかけないのが僕の書き手としての能力の限界だが
とにかく、これほど電源で音が変わるということも
信じがたい。

 

 
僕は、最近は音の基準に、ムターとプレヴィンのチャイコフスキーの
コンチェルトを使用しているのだけれど、
彼女のヴァイオリンの見事な美しい現実感は
ちょっとうれしい歓びだった

 

 
こういうの一聴は百見にまさるというのかどうかわからないが
機会があればぜひ、ご自身の耳できられることをおすすめする
耳は嘘をつかない

 

 

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手堅く芳醇なベルリン放送交響楽団、繊細なアンスネス・・贅沢な夜

 

 

ベルリンには東京と同じようにいくつものオーケストラがあるが、
かの地では、ベルリン放送交響楽団は、ベルリンフィルと人気を二分する
くらいのオーケストラであるらしい
それに比べ、日本では、ベルリンフィルだけが有名でチケットもとりやすく、
ベルリン放送交響楽団の方は人気がいまひとつのなのは惜しい

 

 

指揮:ウラディーミル・ユロフスキー
ピアノ:レイフ・オヴェ・アンスネス
ベルリン放送交響楽団

モーツァルト:オペラ『フィガロの結婚』 K492 序曲
モーツァルト:ピアノ協奏曲第21番 ハ長調 K467
ベートーヴェン:交響曲第7番 イ長調 Op.92 (マーラー編曲版)

 

 
(アンコール)
フェデリコ・モンポウ:街外れ 第1番(ピアノ・アンコール)
J.S.バッハ:管弦楽組曲第3番 BWV1068より第2曲「アリア」

 

 
ユロフスキーの指揮は手堅い
それでいて、ベルリン放送交響楽団の方は、芳醇な音色を
かもしだすから、この組み合わせが悪いはずがない

 

 

また、レイフ・オヴェ・アンスネスは今回、右肘に故障をかかえているとはいえ
とても繊細なピアノを表現するので、
今回の組み合わせはある意味でベストなものだった

 

 

モーツァルトもよかったが、
特にアンコールのモンポウは、アンスネスならではの微妙な細やかさと
やさしさが随所にあらわれていて、すばらしい
はやく肘が治って、本来の彼のすべてをもういちど
きちんと聴いてみたいとおもわさせられるすばらしい演奏だった

 

 
ユロフスキもベト7を壮大なグルーブ感のもとに見事な形にしあげ、
アンコールのバッハもベルリン放送交響楽団の音色を存分にひきだす
見事なものだった

 

 
この組み合わせが長続きし、また来日すること願うばかりの一夜だった

 

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明確な骨格で、大きな音楽を描きだすウルバンスキ

 

 
ウルバンスキ・東京交響楽団を聴いた
ウルバンスキを最初に聴いたのはいつだったか
考えていたら、
彼のベルリンでのベルリンフィルデビューであったことを
思い出した

 

 

確か、モルダウだったと思う
とっても確かな演奏だったと思い出せるが
終わったときに、すごい汗をかいて
ふるえるようにお辞儀をしていた彼を思い出した
ベルリンフィルの重圧というのは
彼をしてもすごいものがあるのだろう

 

 

ポーランド生まれのウルバンスキは
姿・形も整っていて、次世代のスター候補、第一人者である
その指揮ぶりも、まじめで
とにかく、あいまいなところがない
その分、思いがけない音楽のグルーブ感にはしるところがないが
音楽の骨格をきちんとみせるところが
彼の腕のみせどころだ

 

 
最近まで東京交響楽団の首席客演指揮者を
つとめていたくらいだから
今日もオーケストラとは息がぴったり
お互いの信頼感というものが
客席からでも感じられるほどで
演奏終了後も暖かい熱い拍手が
なにやまなかった

 

 

指揮:クシシュトフ・ウルバンスキ
ヴァイオリン:ヴェロニカ・エーベルレ
東京交響楽団

 
モーツァルト:ヴァイオリン協奏曲第5番 イ長調 K.219 「トルコ風」
ショスタコーヴィチ:交響曲第4番 ハ短調 Op.43

 

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ワイヤレスでもゼンハイザーが本気だしたら
とんでもなかった・・MOMENTUM True Wireless

 
僕はゼンハイザーをよく使う
HD800もHD650も、IE80も
どれも、それぞれ個性は異なるが
それぞれのクラスで他をよせつけない
圧倒的音楽性をもつ

 
他社の製品のまさにマイルストーンになっている

 
それぞれが精緻でありながら
音の高低の間の連続性がすぐれていて
どのモデルも常に音楽的な響きをだすのだ

 
今度、寝フォンにでもと思って、
この MOMENTUM True Wireless を導入してみたところ
IE80ほど中・広域の音楽的再生はなく
だいぶフラットに近いなり方なのだが
それでも、とてつもなく音楽的ななり方をする
想像以上というか想像するできなかった
ワイヤレスモデルだ

 
ゼンハイザーの商品のゴーサインをだす人が
きっと相当な音楽好きなのだろうと思われるのだけれど
機会があったら
ぜひ一度お話をうかがってみたいと思った

 
とにかく、現状、ワイヤレスでこれに比較対象に
なりうる製品はないと断言できる

 

 

 

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ただただ感嘆した

水曜日のカンパネラの音楽性の95%はケンモチヒデフミだと
あらためて思った
「水曜日のカンパネラ」を僕は好きだ
「桃太郎」を代表とするさまざまな楽曲の完成度・物語性には
毎回まいったと思わせられる

 

 
「水曜日のカンパネラ」の上手なところは
その広報担当というかイメージ作成を
コムアイという女性に代表させ、
その独特の個性と時にみせるシャーマンのような
表情にゆだねているところだ

 

 
彼女はチャーミングだ
応答も的確でいて、巧みにけむにまく
その感性、表情、神秘性をもとに
メディアへの露出は基本、彼女だけだ

 

 

あの松岡正剛も、水曜日のカンパネラをお気に入りで
陽水・ユーミンにつぐニューミュージックのマイルストーンが
水曜日のカンパネラなどといって
コムアイと対談したりして、悦にいっていたけれど
彼女のチャーミングな部分はあるとして
音楽の構成要素のほとんどはケンモチにあることに
彼は気づいていないようだった
彼も見事にめくらましにあっているのだ

 

 

水曜日のカンパネラの魅力は、究極的には
その楽曲と詞とアレンジにある
その意味でそのすべてをひとりで
てがけているケンモチヒデフミは素晴らしい才能の持ち主だ

 

 

 

 

 

今回、彼のプロでユースによる
まったく別人の女性歌手による楽曲がPVになった
確かにコムアイにはコムアイにしかない
微妙さがとてもよかったことが
このPVをみるとわかる
でも一方で、水曜日のカンパネラの90%が
この中にあることも一目瞭然だ

 

 

彼の創作意欲はとどまるところをしらないようだ
そして、彼の巧みな演出というかプロデュース力も
おそれいる
ケンモチヒデフミから目が離せない

 

 

投稿者 undecuplet | 2019/03/21

ZAZが日本にやってくる

ZAZが日本にやってくる

現代のフランス女性歌手の中では白眉の
ZAZが5月に来日する
彼女の歌声は、
かつてのピアフなどとも共通する
フランス歌手のそれを踏襲する

 
必ずしも音程通りではなく、
そこにある哀惜を見事に音楽にのせる

 
こういう才能の人が次々とあらわれるところに
音楽の未来を感じる

 
楽しみだ

 

 

投稿者 undecuplet | 2019/03/20

熱狂を呼ぶ男~ドゥダメル

熱狂を呼ぶ男:ドゥダメル

 

今日は、スーパスター:ユジャ・ワンとグスターボ・ドゥダメルふたりの
みごとな競演だった

 

1曲目の本邦初演のアダムズの曲は、やや単調なところがあるけど
映画の劇版のような要素もあり、
LAフィルにはもってこいの曲だった
作曲者も登壇し、ユジャ・ワンとハグしあうところは
とてもよかった

 
J. アダムズ:Must the Devil Have All the Good Tunes? 〈日本初演〉
マーラー:交響曲第1番 ニ長調 「巨人」

 
指揮:グスターボ・ドゥダメル
ピアノ:ユジャ・ワン
ロサンゼルス・フィルハーモニック

 

2曲目のマーラーの1番は、ドゥダメルの独壇場だ
曲のメリハリを丁寧にくみあげ、
アメリカのオケらしい、すばらしいダイナミックレンジの
強弱におきかえる
LAフィルの金管と打楽器のよさとあいまって
このマーラーの一番が見事に、まるで彼らのために
作曲されたような曲のようにきかせるのだった

 

終演後もあいかわらず、ドゥダメルは決して指揮台のような
高いところにはのぼらず、団員と同じ高さから
次々とパートを紹介していく
いつもの手口だが、ドゥダメルがすると
みんながとてもうれしそうな表情でこたえるのがよい
劇場一体となって今夜の出来事に祝杯をあげる
そんな空気で終えるのとてもよい

 

やはり、ユジャ・ワン、グスターボ・ドゥダメルはたぐいまれなる
スーパースターだ

 

クラシック界の未来は明るいと確信させられた夜だった

 

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ユジャ・ワンは室内楽でもやはりユジャ・ワンだった
LA philの来日にあわせた小規模な室内楽コンサートがひらかれた

出演
ピアノ:ユジャ・ワン
ロサンゼルス・フィル木管五重奏団、他
曲目
ドヴォルザーク:弦楽四重奏曲第12番 ヘ長調 B.179 「アメリカ」
リゲティ:6つのバガテル
イベール:3つの小品

ブラームス:ピアノ四重奏曲第1番 ト短調 Op.25
西海岸といえば、自由闊達な雰囲気を思うがまさに
それを体現したカルテットではじまった
ブルーローズがデッドな部屋だったかな、と思わせるほど
各人の音がからまない

それぞれの奏でる音がストレートに耳元にやってくる
その分、それぞれの人の個性が際立つわけだけれども
「アメリカ」をきいているはずなのに、
弦カルの「アメリカ」という曲をきいている気になれない、
そんな不思議な空気が漂った一曲目だった
ある意味、よい意味で、「若い」ということばでくくれるのかもしれないが
若手のカルテットの発展途上のある種のすがすがしさが
全面にでていたといえるのだろう

 

ところがどっこい、後半がはじまると一変した
ユジャ・ワン以外全員、大御所といった面々
音量も若手とは比べるべくもなく、テクニックといい、気合いといい
全力でむかってくる
音が見事にミクスチャーされて、まさにピアノカルテットの
醍醐味をみるようだ

 

それでも前半は、ユジャ・ワンが自分をおさえて
伴奏にまわっていたので、重鎮たちのしかめつらでのテクニックの見事さが
際だっていたが
第四楽章を迎えると、ユジャ・ワンはやはりこのまま終わっちゃいけないのかも。
と思ったのか、がんがん加速をはじめたのだ
必死にくらいつく大御所たち、熱量の上がり方は半端ない
終演時には、盛大な拍手でもって観客がもてなすくらい
すばらしいゴールを迎えた

 

 

さらに、止まらぬ拍手につづいて、アンコールが急遽なされることに

 

 

なんといま弾いたばかりの第四楽章をもう一度弾いたのだ
今度は、みんなはほっとした表情で、時には笑顔をみせながら
弾きはじめる
リラックスしたいい空気が流れはじめた・・と思われたのだが
ユジャ・ワンもそんな状況をほっとくわけがない
曲のグルーブにのせ、がんがん加速する
そして、さらに新たなグルーブをつくっていく
音楽が熱気をもち、その熱気が演奏者の熱量・スピードもあげ、
るといった見事な循環構造がつづき、
最後はみな息がつまって窒息するのではないかと思われるほどの
一気呵成感だった
見事に見事な第四楽章だった
なかなか体験できるものじゃない・・すばらしい・・

 

何事でもそうだけれど、はじまりだけで判断しちゃいけない
物事は終わってみるまではわからない

 

今夜もそんな、気分にさせてくれた一夜だった

 

 

 

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地球を球として俯瞰した視座:石川直樹

 
登山家であり、写真家である石川直樹さんの
展覧会(この星の光の地図を写す)をみた

300枚を超える彼の作品を一望できる

昔、山岳写真家というと白川義員に代表される
光と影のワンチャンスをねらった絶景が
常に想像された

だが石川の写真には、
風景というよりむしろ
人間の営みが
極地という人間にとって過酷な状況のもとでも
普遍的に存在しうる
そんな人間へのある種の尊敬に似た
気持ちの投影がある

雪深い北極での犬ぞり
そして、食糧である動物たち
命を互いに委ねあう関係にだけ
たちのぼる
尊い関係性がそこにはある

今回の展覧会の展示方法もすてきだ
いくつかの部屋がカーテンで仕切られ
まったく異なった明るさの部屋で鑑賞する

写真はみる者の環境というか、心持ちによって
同じものであっても同じではないという・・
つまり、観る者自身の投影がそこにあるということを
無意識のうちに観察者に伝えるという点で
見事だ

いずれにせよ彼の写真にあふれる視点は
あたたかい
どのような過酷な環境であっても
それを自分の外のものとしてではなく
環境と一体となった自分の延長線上に
それをとらえる

その視座が心地よい

 

 

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歌姫:畠山美由紀 目黒パーシモンホールで「wayfarler」を歌う

 

 
冨田ラボプロデュースによる最新アルバム「wayfarler」の
お披露目ライブ

 

 
畠山美由紀
冨田恵一
鈴木正人(bass)
小池龍平(Gt)
真城めぐみ(cho)
平 陸(Dr)

 

 
最小編成によるバンドといった感じだろうか

 

 
wayfarler からの曲を中心に、
過去のアルバムからも紹介するという
いいとこどり

 

 
僕は「罌粟」がいちばん好きだったかな
詞は松本隆
難しい歌ながらそこが彼女の歌のうまさを
ひきたてる見事な一曲

 

 
最初、ステージの大きさになじめず
バンドの音が拡散していた感じだったが、
数曲目の罌粟の次の曲あたりから
みんな感じがわかってきたようで
濃密なバンド音色を楽しめた

 

 
畠山さんは、高音を武器にしているところがあるが
実は、低音がチャーミング
それもまわりこんで演じる低音の歌の表現が
彼女の真骨頂

 

 
そして、もちろんバンマスの冨田恵一さんも
見事だが、
いつものとおり、コ-ラスの
真城めぐみさんも遺憾なく実力を発揮
コーラスがきまったときの冨田さんの音楽が
その狙い通りのよさを発揮する

 

 
お披露目にぴったりの2時間だった

 

 

 

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別役実さんの時代を超えた傑作:『あーぶくたった、にいたった』
新国立劇場ではじまった
こつこつプロジェクトの第一弾
リーディング公演の『あーぶくたった、にいたった』を観た
朗読劇『あーぶくたった、にいたった』作別役 実 演出:西沢 栄治
出演:龍昇 中原三千代 佐野陽一 浅野令子
素晴らしいとしかいいようのない
濃密な空間がそこに登場した

こつこつプロジェクトとは芸術監督の小川さんがはじめたプロジェクト

++++++++
作り手が、試し、作り、壊し、また作る場。
長期的に作品を育てるプロジェクトが始まる。

「作り手が、通常の一か月の稽古ではできないことを試し、
作り、壊して、また作る場にしたい。」という芸術監督の意を受け、
一年間を通して作品を育てていくプロジェクトです。

今シーズンでは、最初の一歩としてリーディング公演を披露し、
その後定期的な発表を経て、作り手と芸術監督、新国立劇場とが議論と
コミュニケーションを重ね、作品を練り上げ、最終的には通常の演目として数年後の本公演を”こつこつ”長期的に目指します。時間に追われない稽古のなかで、作り手の全員が問題意識を共有し、作品への理解を深め、舞台芸術の奥深い豊かさを一人でも多くの観客の方々に伝えられる公演となることを目標とします。
この度はこの主旨に賛同いただけた、
新進気鋭の三人の演出家がこの壮大なプロジェクトに参加いたします。
++++++++
++++++++
あらすじ(プログラムに書かれたもの)
ある婚礼で幕が上がる。新郎新婦は、
まだ生まれぬ子供との将来を想像している
会話の中で彼らのこどもはどんどん成人し、
仰天な顛末を迎えてしまう。
楽しい新婚時代から、子どもも生まれ落ち着いた結婚生活、
そして老夫婦へ。
あちこちをぐるぐるしながら
たどりついた果てに、
二人の上にチラチラと雪が舞いはじめる・・・・
++++++++

このあらすじでもたぶんまったく想像がつかないだろうと思う

とにかく出演者は台本をもって登場し
ほとんどリーディングをするだけ
だけれど、観る者の頭の中に
現実の芝居以上の演劇空間が生まれ
深い感動があるのだ

特に最年少の「女1」を演じる浅野令子さんが素晴らしい
プログラムによれば新国立劇場研修所第一期生とのこと
この劇場が育てた役者がこのように羽ばたくとは
おそれいる
というか、新国立劇場の存在意義がさらに重要になることの
証左でもあるのだろう

何か物語の素晴らしさ、演技のすばらしさを
僕の手で上手に伝えられないのはもどかしいが、
機会があればぜひみてほしい
チケットはわずか2000円
濃密な別役体験がそこにはあった

 

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