投稿者 undecuplet | 2011/03/05

ロックなクラシック YUJA WANG(ユジャ・ワン) 紀尾井ホール ピアノリサイタル

紀尾井ホールにて、ユジャ・ワンのピアノリサイタル。ソロ公演は日本ではじめてではないだろうか。新世代を感じるみずみずしいチャーミングなピアノだった。

ユジャ・ワン ピアノリサイタル
紀尾井ホール

ラフマニノフ: コレルリの主題による変奏曲 op.42
シューベルト: ピアノ・ソナタ第19番 ハ短調 D958 (遺作)
スクリャービン: 前奏曲 ロ長調 op.11-11
前奏曲 ロ短調 op.13-6
前奏曲 嬰ト短調 op.11-12
練習曲 嬰ト短調 op.8-9
詩曲第1番 嬰ヘ長調 op.32-1
メンデルスゾーン(S.ラフマノニフ編): 夏の夜の夢」から スケルツォ
サン=サーンス(V.ホロヴィッツ編): 死の舞踏 op.40
V.ホロヴィッツ : カルメン変奏曲

アンコール
ラフマニノフ : ヴォカリーズ
モシュコフスキー :火花
グルック : 精霊の踊り
ヴォロドス: トルコ行進曲
ユジャ・ワンは中国北京生まれの23歳。6歳からピアノの勉強をはじめ、中国、オーストラリア、ドイツで次々にデビュー。北京の中央音楽院でリン・ユェ ン、チョウ・グォアンレンに師事。1999年からは、カルガリーのマウント・ロイヤル・カレッジ音楽院でホン・クヮン・チェンとテム・ブラックストーンの 師事。2002年にはアスペン音楽祭のコンチェルト・コンペティションにおいて15歳で優勝。その後アメリカに移りフィラデルフィアのカーティス音楽院で ゲイリー・グラフマンに師事。2006年には、ギルモア・ヤング・アーティスト賞を受賞。

ラフマニノフ、シューベルトあたりは、それでも比較的おとなしく弾いていたのだけれど、スクリャービンの詩曲あたりから本領発揮。メンデルスゾーン、死の舞踏、カルメンあたりは、もはや新世代のグルーブ感あふれる演奏、それはまるでロックの魂を感じるような内からほとばしり出るきもちをピアノにたたきつけるかのごとくの演奏だった。

Youtubeで練習風景がみられるが、だいぶこもった音だけれど、そこにも彼女の素晴らしい才能の片鱗をみることができる。

きわめて卓抜した演奏テクニック、とくに確実でありながらチャーミングな左手がユジャ・ワンの演奏に素晴らしい彩りをあたえている。アムランではないけれど、高速に正確に奏で、それでいて高速だからこそ微妙にインクルードできるわずかなゆらぎのようなものが音楽の新しい喜びをつむぎだす。また新しく新世代ピアニストが誕生した・・そんな感じなのだ。

そして、アンコール。こころあたたまるやさしいヴォカリーズがあったかと思えば、最後は、ヴォロドスアレンジのとてもチャーミングなトルコ行進曲。ファジル・サイのワントーン風のアレンジとはちがって、音楽的により奥深い、それでいて魂の叫びのようなものが含まれた新しいトルコ行進曲を堪能できた。

youtubeにちょっと昔の演奏があったから片鱗をぜひみてほしい(紀尾井ではもっと激しい気性のトルコマーチだった)。

いや、すばらしいアーティストに久々に邂逅した。そんな感じの一夜。最後に、紀尾井ではきけなかったけれど、ある意味もっとも彼女の片鱗がわかる熊蜂の飛行をぜひどうぞ。


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